“新麦”とは、その年の夏から秋にかけて収穫した小麦をすみやかに製粉した、獲れたて・挽きたての小麦のこと。
8月10日解禁の九州にはじまり、10月20日の北海道まで、桜前線のように「小麦前線」が日本列島を縦断していきます。
麦フェス2024では、全国19ヶ所の“新麦”を使用しています。
九州
ろのわ(品種:ミナミノカオリ)
産地:熊本県菊池市/収穫時期:6月上旬
熊本県菊池市で、化学肥料や農薬を使わず、有機栽培で小麦を作っている東博己さん。南国のぎらぎら照りつける太陽のもと、草取りも手で行うなど、苦労は絶えません。でも、それだけに、小麦の風味は格別。おおらかに雑味も含み、野趣に富んでいます。製粉は奥さんの役割。数十年を経た年代物の製粉機をがたごとと動かします。こんな作り方も、大きな工場製の小麦にはない「味」になっています。
熊本製粉(品種:ミナミノカオリ、モチハルカ)
産地:熊本県(一部福岡県)/収穫時期:6月初旬
今年は福岡県柳川産ミナミノカオリ「南のめぐみ」が新麦として登場。甘さと野生味ある香りが個性です。また、九州初のもち小麦が「紅」。もち米のようにもちもちする性質があるため、パンがおもちのような食感になる、おもしろい小麦です。
大陽製粉(品種:ミナミノカオリ・チクゴイズミ)
産地:福岡県/収穫時期:6月中旬
福岡が小麦の王国だと知っていますか?実は北海道に次いで2番目に多くの小麦を生産。初夏、高速道路を走れば青々とした広大な小麦畑を見ることができます。そんな福岡で作られる「ミナミノカオリ」。甘さと香り、そしてさっくりと歯切れがいいのが自慢です。ハード系のパンからラーメンまで幅広く力を発揮します。また、香川と並ぶうどん県・福岡で育ったチクゴイズミが2024新麦デビュー。輝くような甘さとふにゅふにゅとしたやさしくも不思議な食感が、うどん職人のみならずラーメン職人も虜にしています。
田中製粉(品種:ミナミノカオリ)
産地:福岡県/収穫時期:6月下旬
江戸時代に創業した福岡県八女市の製粉会社。もともとは、穀倉地帯である筑後平野で育てられた小麦を水車で挽いていました。約70年も前の製粉機と石臼を併用して製粉しています。新麦として発売されるのは、福岡県福智町産のミナミノカオリ。タンパクの割合が九州産としては非常に高く、いろんなパンや麺に力を発揮します。
山陰・東海
大山こむぎプロジェクト(品種:ミナミノカオリ/銀河の力/チクゴイズミ)※ 本年は新麦発売なし
産地:大山山麓 (琴浦町・大山町・南部町・伯耆町・米子市・倉吉市)/収穫時期:6月上旬
神の山ともいわれる、鳥取県の大山。その雄大な姿を望める麓で、小麦が作られています。鳥取では長く小麦作りが途絶えていましたが、約10年前、麦ノ屋の出井亘さんというひとりのパン職人の情熱が生産者を動かし、どんどん面積を広げてきました。標高が高いところ低いところで気候や土が異なり、さまざまな品種が生産されるのも特徴。「石うす挽き全粒粉 生産農家指定小麦『野口龍馬』」はほうじ茶のような香ばしい香り。
大地堂(品種:ディンケル小麦)
産地:滋賀県日野町/収穫時期:8月上旬~中旬
約15年前、ディンケル(スペルト小麦)の商業栽培に誰よりも早く取り組んだ、廣瀬敬一郎さん。ドイツから取り寄せた小麦は、日本の風土に合わず、ほぼ全滅することも過去数度。栽培方法を暗中模索し、独力で確立しました。自慢はドイツ製の石臼。穴が多い玄武岩でできていて、空気が入るために熱をもたず、風味を保ったまま挽くことができます。アーモンドのような、唯一無二の香ばしさが特徴です。
素材舎(品種:桑名もち小麦)
産地:三重県桑名市/収穫時期:6月上旬
「地元産の小麦を!」と考えた粉屋の保田与志彦さんが探しだしてきたのはなんともおもしろい品種。小麦なのにもち米のように、もちもちするのです。お米に似た香りもあるので、パンにすると和の惣菜と相性抜群。うどんやラーメン、パンケーキでも、食べたことのないようなおもしろい食感になります。名古屋から揖斐川を越えたところの川沿いの畑で作られています。
平和製粉(品種:ニシノカオリ)
産地:三重県/収穫時期:6月上旬
三重県の名物小麦がニシノカオリ。皮がぱりっぱりになり、ナッツのように香ばしい。ハード系パンにすごく向いている、フランス産小麦のような日本でめずらしい品種です。これを挽いているのが、三重県の平和製粉。小麦畑に囲まれた新工場は、建物の最上階から新鮮な空気を取り入れ、工場内に循環。空気を吸い込みやすい小麦粉だけにおいしさにつながる部分。太陽光で発電を行うなどエコでおいしい製粉所です。
布袋食糧(品種:ゆめあかり/きぬあかり)
産地:愛知県/収穫時期:6月上旬
愛知県の名物きしめんにもぴったりの、もちもちする性質のある小麦が「きぬあかり」。麺用の小麦しかなかった愛知県に近年登場した待望の強力小麦が「ゆめあかり」。しみじみとした甘さがあり、硬いパンから食パンまで、なんでも作れる優等生です。地元・愛知の小麦を挽くことに一生懸命な会社が布袋食糧。出荷する際、一袋一袋慎重に検査を欠かさないのも「布袋クオリティ」です。
西尾製粉(品種:ゆめあかり)
産地:愛知県/収穫時期:6月上旬
うどん用の小麦しかなかった愛知県に最近生まれた強力小麦が「ゆめあかり」。バゲットやクロワッサンなど、フランス生まれのパンにうってつけだと、パン職人の間で評判になっています。風味の濃い、小麦の粒の外側まで挽きこむ製法で、香りを活かしています。
関東
ぼくらの小麦(品種:ゆめかおり)
産地:神奈川県/収穫時期:6月中旬
神奈川県秦野市で作られる小麦「ゆめかおり」。パンにボリュームを与え、水分を多く含めるため、ふわふわもっちりなパンになります。また、横浜市の障がい者施設「共働舎」にて石臼で製粉、風味を逃しません。収穫は、同施設を利用する障がいのある方たちがお手伝い。誰もが参加できるコミュニティ作りに小麦が一役買っています。
湘南小麦(品種:農林61号/ニシノカオリ)
産地:神奈川県伊勢原市周辺/収穫時期:6月中旬
地元・湘南の指定農家で作られる小麦をブレンド。人気店「ムール・ア・ラ・ムール」のシェフであり、製粉会社「ミルパワージャパン」の製粉技師でもある、創麦師・本杉正和さんが、パン職人としての経験と感性を活かして、パンにとって最高の製粉を行います。工場には巨大な石臼が6機。これをゆっくりゆっくり回すから、小麦のもつ風味を残さず、粉にできます。
前田食品(品種:ハナマンテン/あやひかり/ゆめかおり)
産地:埼玉県・茨城県/収穫時期:6月上旬
国産小麦専門の製粉会社。埼玉・茨城の小麦を知り尽くしています。ハナマンテンは首都圏で作られる貴重な強力小麦。主産地は埼玉県坂戸市・川越市の原農場。東京の近くにこんな広々とした小麦畑が!と驚きます。食パン、ベーグル、バゲットとどんなパンでも作れる万能選手。麺にしたときはつるみともちもちが特徴です。「あやひかり」は埼玉のうどん用小麦。もちもちする性質があり、にゅるにゅるとおもしろい食感。 ゆめかおりは「茨城パン小麦栽培研究会」産。パンにしたとき、国産ではめずらしくもっちりしない歯切れのよさを誇り、甘みも十分。どれも関東近県産。意外と近くにこんなにおいしい小麦があることを知ってください!
SIXTY-ONE by 新麦コレクション(品種:農林61号)
産地:埼玉県小川町・ときがわ町/収穫時期:6月上旬
2024年、新麦コレクションがリリースした「食のローカルサステナブル」(=「地域」を切り口にした食の持続可能性)を”フレッシュミル”(挽きたてにこだわった製粉)によって実現するプレミアム小麦全粒粉。
埼玉県小川町の下里ゆうき、埼玉県ときがわ町のTOFU(ときがわ町有機農業者組合)生産による農林61号を東京・世田谷の島田製粉所で製粉。挽きたてをすぐに近隣のパン屋さんに届けるから、フレッシュでおいしい。まさに同じ”地域”にいるからできることです。腸活に効果のある全粒粉をみんなに食べてほしい。環境保全型農業を広げたい。そんな未来への希望をフレッシュミルで実現していきます。
東北
府金製粉(品種:もち姫/ゆきちから/ネバリゴシ)
産地:岩手県・青森県/収穫時期:7月上旬
北の大地・岩手県の広大な畑でとれる小麦を、岩手山のふもとで、岩手の小麦を挽くために誕生した製粉会社が品種ごとの特徴を活かして、粉にします。もち姫は、岩手県で開発された、まるでもち米のように、もちもちした性質をもつ世界でも例のない小麦。パンでも、うどんでも、ラーメンでも、いままで食べたことのないようなもちもち食感。岩手県紫波町で町をあげて栽培に取り組んでいます。ゆきちからは、ごはんのような純白な甘みに特徴があります。青森県産ネバリゴシは、もちもち新感覚。うどんにするとにゅるっとしたやみつきの食感になります。
北海道
前田農産(品種:はるきらり)
産地:北海道十勝・本別町/収穫時期:8月上旬~中旬
パン屋さんに必要とされる小麦つくりをする!と、5品種の小麦を栽培、収穫、乾燥、選別+北海道産小麦のプロ製粉会社、江別製粉様に委託し5品種の小麦粉「香味麦選」として販売しています。毎年毎圃場の土壌分析からミネラルバランスのとれた土作りとGPSや光学式レーザーセンサーを利用した管理技術で、パン屋さんの声に応え、おいしい小麦を作ります。はるきらりは、パンの皮をぱりっ中モチっと仕上げられる小麦。味のバランスがよく、ブレンドする素材の風味を生かすことができます。
中川農場(品種:Blés de Population/スペルト)
産地:北海道十勝・音更町/収穫時期:7月下旬~8月上旬(8月下旬より随時出荷)
自然栽培で小麦を栽培する中川泰一さん。化学肥料も農薬も使わず、クローバーなどの草を植えて肥料にしているため、小麦も草のような青い香りがします。「Blés de Population」は数種の北海道小麦と古代小麦の種を混ぜて畑にまいたもの。年々、自然に交配し、その土地ならではの唯一無二の小麦になっています。「スペルト」は昔の小麦の姿を保った小麦。一部のグルテンアレルギーの人でも食べられ、すばらしい香りがあります。
アグリシステム(ヌーヴォーオーガニックライ麦全粒粉/品種:ハンコック)
産地:バイオダイナミックファームトカプチ(北海道十勝・更別村)/収穫時期:8月上旬~中旬
農薬も化学肥料も使わず、雑草だらけの自然な畑で、ライ麦がたくましくのびのびと育ちました。品種はアメリカから輸入したハンコック。ライ麦全粒粉の概念が変わるほどの甘さです。 ライ麦は地中深く根を張るため、健全な土壌を作るのに役立ちます。ライ麦を輪作(病気にならないよういくつかの作物を交替で作ること)のひとつに加えることで、次世代に健全な土壌を継ぐことが普及の狙いです。
江別製粉(品種:ハルユタカ/きたほなみ/キタノカオリ
産地:北海道各地/収穫時期:きたほなみ/キタノカオリ 7月下旬、ハルユタカ 8月上旬~中旬
北海道産小麦を広めてきたパイオニアの製粉会社。特に「ハルユタカ」は、国産小麦のパンがまだ一般的でなかった頃から、生産者の協力を得て、何度も不作の年を乗り越えながら栽培してきました。北海道の小麦らしいミルキーな甘みと、地粉らしい旨味が共存しています。ラーメン用小麦のトップブランドとして多くの自家製麺ラーメン店が愛用しています。「きたほなみ」はお菓子や麺にうってつけ。今までの国産小麦のイメージをくつがえす、軽やかさ、さくさく感があります。
「キタノカオリ」は、栽培の難しさもあり、販売休止していましたが、今年見事復活! “奇跡の小麦”とも呼ばれる、ミルキーな甘さをぜひ味わってみてください。